細菌性膣炎~医療専門家向け

細菌性膣炎

原因

細菌性膣炎における細菌学的な特徴は以下の通りです。

  • 過酸化水素産生乳酸菌の減少または枯渇。
  • 嫌気性細菌の過剰増殖。通常は正常時の100-1000倍に達する。

培養結果で頻繁に観察される細菌は以下の通りです:

Gardnerella vaginalis, Prevotella種, 嫌気性グラム陽性球菌, Mobiluncus種, Ureaplasma urealyticum, Mycoplasma hominis

症状

大量の帯下および魚匂いを特徴としますが、これは増殖したグラム陰性嫌気性菌から産生されるムチン分解酵素によって、正常な膣のムチン成分が分解されたためです。

匂いの原因は、嫌気性菌の代謝により産生されるアミンの蒸発によるものです。

診断基準

一般臨床で用いる基準

Amselの臨床診断基準には以下の4つの項目があり、少なくとも3つで適合する必要があります。

  1. 膣分泌物pHが4.5以上である。
  2. 膣分泌物の性状は、薄く均質である。
  3. 膣分泌物に10%KOHを一滴加えた時に、アミン臭がする(臭気テスト陽性)。
  4. 膣分泌物の生食標本で、多数のクルーセル細胞が確認される (生食標本を用いて100x顕微鏡下で膣上皮細胞の20%以上)。注:クルーセル細胞とは、膣の上皮細胞にたくさんの細菌が付着している細胞。

Amselの臨床診断基準は臨床的に有用なものですが、クルーセルの観察に習熟していない医師が顕微鏡観察した場合には、間違った所見が得られる可能性があります。

また、トリコモナスや酵母を見逃す場合もあります。

その他のポイント・オブ・ケアの検査項目

  • G. vaginalisの割合が高いこと。
  • シアリダーゼ、トリメチルアミン、およびプロリンアミノペプチダーゼ等の複数のアミンが認められること。
  • アミンと高pHの組み合わせ。

上記のような客観的な診断方法があるにも関わらず、一般臨床では、特異性のある検査を実施せずに、症状のみに基づいて処方することがよくみられます。

実際、適切な抗生物質が使用されるならば、そこそこの治癒率は達成されます。

しかし、再発や治療反応が得られなかった場合の対応を考えるならば、診断根拠を持っておくことは重要です。

臨床研究で用いる基準

正確な診断のためには、膣液中のグラム染色スコアを評価します。

これは、Nugent基準と呼ばれるもので、細菌性膣炎関連細菌と乳酸菌の相対的な割合を評価して、細菌フローラの状態を0-10のスケールで示すものです:正常(スコア = 0-3)、中間 (スコア = 4-6)、細菌性膣炎 (スコア = 7-10)。

Nugentスコアは、臨床研究にてゴールドスタンダードとして用いられている評価基準です。

Nugentスコア 0-3 4-6 7-10
乳酸菌 ほぼ正常(++++) (+ - ++) 全く見られない (-)
嫌気性菌 全く見られない(-) (+ - ++) 多数 (++++)

PCR

様々な細菌性膣炎起因菌の定性的および定量的検出目的でPCRが検討されています。

将来的には有用性が期待されますが、細菌性膣炎の診断では十分にはバリデーションされておらず、費用面でも高額になります。

また、Nugentスコアで潜在性と症候性の違いをPCRで示すことはまだ出来ていません。

現在市販されているPCRでは、G. vaginalis, Bacteroides fragilis, Mobiluncus mulierisおよび Mobilincus curtisiiを検出することが可能ですが、これらだけでは細菌性膣炎の診断には十分ではありません。

このように、PCRを用いた細菌性膣炎の診断が実地臨床で利用されるようになるまでには、もう少し時間がかかります。

合併症

Amselおよび/またはNugent基準で診断された細菌性膣炎では、妊娠結果が不良であったり、PID、HIV感染、他の性感染症、産婦人科関連の術後創傷感染のリスクが高まることが示されています。

その一方で、抗生物質を使用してもこれらの合併症を予防することができなかったり、一部の観察試験では、BVとPIDの関連が示されなかったことから、因果関係に関して疑問も示されています。

これらを踏まえ、NugentとAmsel基準は実地臨床では有用な診断ツールではありますが、膣内の細菌フローラに関する具体的なデータが得られることが望まれています。

「細菌パネル」の情報が得られるならば、正確な治療方針の策定、再発リスクの評価、そして合併症のリスクに関して有用です。

例えば、細菌AとBの組み合わせが観察される場合には、病原性が強い、あるいは合併症を誘発するリスクが高まるなどの判断が、将来的には可能となります。

合併症との因果関係を判断する際には、細菌叢の変化のみではなく、それに伴う宿主環境の変化も見る必要があります。

妊娠異常

細菌性膣炎と早期産(Pre-term delivery: PTD)ならびに前期破水(PPROM)との関係を検討する上での課題は、これまでの研究は妊娠後期に焦点を当てていたということがあります。

症状発現時に焦点を当てるならば、最初の誘引となっているものが、他の因子によりマスクされてしまうことが往々にしてあり、また、評価対象の試料もワンポイントとなり、潜在的なバラツキが大きくなります。

そのため、今後実施する研究では、臨床評価を早期に実施して、膣内の細菌フローラに関しては経時的に評価すべきと考えられます。

その一方で、妊娠早期から評価を実施するならば、(各患者さんにて、妊娠後期に実際に発症するかどうか不明のため)対象とすべき患者数が必然的に多くなります。

一つの方策としては、被験者選択基準として、これまでに早産を経験している患者に限定することは症例数を適切なサイズに抑える上で有効と考えられます。

早産と歯肉炎との相関も示されています。

そのため、口腔内の細菌叢と膣内の細菌叢の変化に何等かの相関があるかを検討する必要があります。

最後に、抗生物質を用いた細菌性膣炎の治療では、再発率が非常に高いため、細菌性膣炎と他の合併症の因果関係を前者の治療を切り口として証明することは技術的に容易ではありません。

そのため、抗生物質での治療後に効果的な再発予防治療を実施する必要があります。

細菌性膣炎とHIV感染症との関係

細菌性膣炎とHIV感染症との関係は明確に示されています。

また、HIV感染により細菌性膣炎を発症することも、これまでの研究から明らかになっています。

細菌性膣炎の治療戦略が進歩することで、HIV感染リスクが低下するならば、公衆衛生上のメリットには大きなものがあります。

骨盤内炎症性疾患 (PID)

PIDは、発症率が低いため研究対象としては容易ではありません。

また、臨床的な診断も特異性に劣ります。

腹腔鏡を用いた診断は一般的なものではないため、ファローピアン管から試料を直接採取して、膣内のどの細菌が感染を起こしたかを検討することは困難です。

子宮内膜のバイオプシーは実施可能性が優れているため、近年実施されているPIDの臨床試験でよく採用されています。

術後感染症

細菌性膣炎は、出産後の子宮内膜炎、子宮摘出後の膣断端蜂窩織炎、および流産後のPIDの原因ともなります。

細菌性膣炎分野の臨床試験の限界

細菌性膣炎に対する治療試験の結果を理解するには、米国食品医薬品局(US FDA)から発出されているガイドライン(Bacterial Vaginosis ― Developing Antimicrobial Drugs for Treatment)を適切に理解できている必要があります。

同ガイドラインでは、臨床的な寛解の定義として、臨床症状(Amsel基準)の全てが消失することとしています。

この診断基準を採用するならば、既存の治療薬(経口および膣内投与)の治癒率は約50%程度になります。

一方、女性の膣症状の改善を基準とするならば(Amsel基準やNugent基準に基づく)、大部分の臨床試験の成績では、初期治癒率は85%以上になります。

問題をさらに複雑にしていることとして、早期の再発率が高いこと (3月後で30%、半年後で50%、一年後で75%)があります。

男性パートナーに対する治療効果に関しては、複数の臨床試験で男性パートナーを抗生物質で治療しても、女性患者の膣炎症状の改善や再発率とは相関していないことが示されています。

その一方で、細菌性膣炎の原因として性感染症にパターンが示されており、理解が困難な問題です。

ただし、このことから性的感染が除外されるわけではありません。

考える理由の一つとして、これまでに実施された男性パートナーに対する臨床試験において、抗生物質の投与量が不十分であった可能性は否定できません。

細菌性膣炎の臨床試験論文においては、試験間のバラツキが大きい傾向があります。

例えば、試料の採取のタイミングが異なること、組み入れ基準が異なること(特に細菌性膣炎の症状)、治験薬投与前の患者に使用されていた薬剤がコントロールされていないことなどがあります。

理想的には、

(1)膣試料のサンプリングは、ベースライン、そして経時的に採取して、膣フローラの変化を見るようにします。

(2) 客観的に臨床評価に加えて、被験者の自己評価の採用、

(3) Nugent 基準を採用することなど。

乳酸菌とは

Lactobacillus acidophilusは、ヒトの消化管や膣内に生息する正常な細菌群です。

L. acidophilus は、最も一般的に使用されている乳酸菌で、いわゆる善玉菌です。

これらの細菌は、健康な消化管および膣内フローラの維持に有用です。

L. acidophilusは、みそ汁のような大豆系の発酵食品から摂取することができます。

乳酸菌治療のメリット

女性の膣に最適の乳酸菌を、膣内に直接投与することで、抗生物質等の殺菌作用に依存することなく、悪玉菌を駆逐します。

これは以下の作用で達成されます。

  1. 乳酸菌が膣の内面を覆うことで、悪玉菌が増殖する場所を無くす
  2. 正常な膣の内面には、腸と同様に無数の細菌が生息しており、それらが正常なフローラを形成しています。

    細菌性膣炎は、それらの細菌のバランスが崩れた状態で、様々な症状が現れます(過度の分泌物、掻痒感、異臭、炎症反応、発熱、倦怠感他)。

  3. 膣内を酸性に保つことで、悪玉菌の増殖が困難になる
  4. 悪玉菌は、酸性の環境に弱く、正常なフローラのpHは酸性に保持されています。

    しかし、善玉菌が少なくなるとpHが上昇してしまいます。

    その結果、善玉菌には不都合な環境である一方、悪玉菌には適した環境となり、症状が悪化します。

  5. 生体の自浄作用を回復させるため、長期の効果が期待出来る
  6. 細菌性膣炎に対して、医療機関で実施される標準療法は、抗生物質の経口および/または膣内投与です。

    その場合、悪玉菌は駆逐されますが、それと同時に善玉菌も死滅するため、正常な細菌フローラとは著しく異なった膣内環境となります。

    そのため、短期的な治療効果が得られても、再発し易くなります。

    また、抗生物質使用に伴う副作用の問題(胃腸障害、抗生物質に対する過敏症)もあります。

    ラクトフローラでは、正常な細菌フローラを回復させるため、効果が持続し、再発リスクも低下します。

  7. 抗生物質の投与量を減らせる(投与量および/または投与期間)可能性があり、抗生物質の副作用軽減効果が期待されます
  8. 抗生物質療法は、通常は1週間程度の投薬期間ですが、治療をそれで終了させると、その後に高い確率で再発します。

    これまでの研究では、治療後6月で50%、12月で75%の女性が再発することが示されています。

    そのため、抗生物質を長期間に渡って服用する必要があり、副作用のリスクが高くなります。

乳酸菌治療の特徴

膣炎治療用の乳酸菌製品には、以下の特徴があります。

含まれているラクトバシラス属は、健康な女性から得られた菌種で、病原性はありません。

乳酸菌は、尿生殖器系に特化したもので、飲む/摂取するタイプの乳酸菌健康食品やヨーグルトは、決して膣内に投与しないでください。

膣内環境に最適化されているため、膣内の上皮細胞への付着性および定着性が高いことが示されています。

病原菌(悪玉菌)の成長を抑制する乳酸を産生するため、膣本来の環境である酸性状態が回復されます。

さらには、過酸化水素および殺細菌物質も産生されます。

一部の乳酸菌は、膣ガルドネレラ菌に対して拮抗作用があります。

一部の製品には、特殊な炭水化物(ラクチトール)が添加されており、善玉菌にのみ栄養が与えられます。

病原菌はこの炭水化物を発酵で利用することができません。

安全性

ラクトバシラス属の忍容性は極めて良好で、副作用は殆ど報告されていません。

ラクトバシラス属は妊娠女性(出産2-4週間前)および授乳中の女性(最大で6月間)においても問題なく使用されています。

L. acidophilusは、早産の予防目的で臨床研究が実施されており、重篤な有害事象は報告されていません。

関連論文

  1. Bettermann, K., Arnold, A. M., Williamson, J., Rapp, S., Sink, K., Toole, J. F., Carlson, M. C., Yasar, S., Dekosky, S., and Burke, G. L. Statins, risk of dementia, and cognitive function: secondary analysis of the ginkgo evaluation of memory study. J Stroke Cerebrovasc.Dis 2012;21(6):436-444.
  2. Dardano, A., Ballardin, M., Caraccio, N., Boni, G., Traino, C., Mariani, G., Ferdeghini, M., Barale, R., and Monzani, F. The effect of Ginkgo biloba extract on genotoxic damage in patients with differentiated thyroid carcinoma receiving thyroid remnant ablation with iodine-131. Thyroid 2012;22(3):318-324.
  3. Han, S. S., Nam, E. C., Won, J. Y., Lee, K. U., Chun, W., Choi, H. K., and Levine, R. A. Clonazepam quiets tinnitus: a randomised crossover study with Ginkgo biloba. J Neurol.Neurosurg.Psychiatry 2012;83(8):821-827.
  4. Herrschaft, H., Nacu, A., Likhachev, S., Sholomov, I., Hoerr, R., and Schlaefke, S. Ginkgo biloba extract EGb 761 in dementia with neuropsychiatric features: a randomised, placebo-controlled trial to confirm the efficacy and safety of a daily dose of 240 mg. J Psychiatr.Res 2012;46(6):716-723.
  5. Ihl, R., Tribanek, M., and Bachinskaya, N. Efficacy and tolerability of a once daily formulation of Ginkgo biloba extract EGb 761 in Alzheimer's disease and vascular dementia: results from a randomised controlled trial. Pharmacopsychiatry 2012;45(2):41-46.
  6. Laws, K. R., Sweetnam, H., and Kondel, T. K. Is Ginkgo biloba a cognitive enhancer in healthy individuals? A meta-analysis. Hum.Psychopharmacol. 2012;27(6):527-533.
  7. Lee, J., Sohn, S. W., and Kee, C. Effect of Ginkgo biloba Extract on Visual Field Progression in Normal Tension Glaucoma. J Glaucoma. 5-16-2012;
  8. Vellas, B., Coley, N., Ousset, P. J., Berrut, G., Dartigues, J. F., Dubois, B., Grandjean, H., Pasquier, F., Piette, F., Robert, P., Touchon, J., Garnier, P., Mathiex-Fortunet, H., and Andrieu, S. Long-term use of standardised Ginkgo biloba extract for the prevention of Alzheimer's disease: a randomised placebo-controlled trial. Lancet Neurol. 2012;11(10):851-859.
  9. Yasar, S., Lin, F. M., Fried, L. P., Kawas, C. H., Sink, K. M., DeKosky, S. T., and Carlson, M. C. Diuretic use is associated with better learning and memory in older adults in the Ginkgo Evaluation of Memory Study. Alzheimers.Dement. 2012;8(3):188-195.
  10. Zadoyan, G., Rokitta, D., Klement, S., Dienel, A., Hoerr, R., Gramatte, T., and Fuhr, U. Effect of Ginkgo biloba special extract EGb 761 on human cytochrome P450 activity: a cocktail interaction study in healthy volunteers. Eur J Clin Pharmacol 2012;68(5):553-560.
  11. Zhang, S. J. and Xue, Z. Y. Effect of Western medicine therapy assisted by Ginkgo biloba tablet on vascular cognitive impairment of none dementia. Asian Pac.J Trop.Med 2012;5(8):661-664.

関連記事

ページの先頭へ